四百年続く平和への祈り 久能山東照宮 前編

久能山東照宮は、静岡県静岡市駿河区根古屋にある神社です。

久能山東照宮

久能山東照宮は静岡市にある徳川家康を祀る神社です。社殿は極彩色の装飾が施された豪華な造りで、国宝に指定されています。駿河湾を望む山の中腹に位置し、石段を上ると壮麗な本殿が現れます。境内には家康の遺品を展示する博物館もあり、歴史を感じることができます。

久能山東照宮 手水処

久能山東照宮の手水処は、木枠の内部には水が流れ続けており、底にはいくつもの穴が空いているため、水が自然に漏れ出す仕組みになっています。この構造により、一度に多くの人が手を洗うことが可能です。一般的な手水舎とは異なり、縦に長いスペースを活かした設計になっているのが印象的です。参拝前の清めとして、この特別な手水処を体験するのも楽しみの一つです。

久能山東照宮 楼門

久能山東照宮 楼門は、社務所受付を通ると目に入る朱塗りの大きな門です。二階建ての構造を持ち、建築の美しさと歴史的な価値が感じられます。重要文化財に指定されており、格式の高さを示しています。この門をくぐることで、境内の荘厳な雰囲気を一層感じることができます。

久能山東照宮 楼門

朱塗りの楼門は、鮮やかな色合いが特徴です。中央の蟇股(かえるまた)には、鉄や銅を食べるとされるバクの彫刻が施されています。バクは平和の象徴とされ、楼門を守る存在となっています。また、門の両脇には随身ずいしん)の像があり、格式ある佇まいを演出しています。

久能山東照宮 楼門

楼門の軒下中央には、第108代後水尾(ごみずのお)天皇の宸筆による「東照大権現」の扁額が掲げられています。このため、楼門は「勅額御門(ちょくがくごもん)」とも呼ばれています。歴史的な背景を持つこの扁額は、門の格式の高さを象徴する存在です。

久能山東照宮 楼門

楼門の表側左右には格子戸があり、その内側には随身像が鎮座しています。一方、裏側の金剛柵内には狛犬が据えられています。狛犬は左右で異なり、角のない方が獅子、角のある方が狛犬とされています。これらの像が門を守ることで、厳かな雰囲気を作り出しています。

久能山東照宮 徳川家康公 御手形

楼門には、徳川家康公の御手形の色紙が置かれています。これは家康公が38歳の時の手形とされ、実際に自分の手と重ねてその大きさを体感することができます。御手形を写した色紙は授与所で入手することができます。家康公の手がどれほどの大きさだったのか、実際に比較することで歴史上の人物の存在をより身近に感じることができます。

久能山東照宮 神厩

楼門を抜けた先には、神厩(しんきゅう)があります。神厩は、家康公の愛馬を飼育していた建物です。重要文化財に指定されており、当時の厩(うまや)の姿を今に伝えています。現在は実際の馬ではなく、名工・左甚五郎作と伝わる木像の神馬が納められています。

久能山東照宮 神厩

神厩に納められている木像の神馬は、細部まで精巧に彫られた見事な造形が特徴です。特に眼球にはギヤマン(当時のガラス)が使用されており、本物の馬のような存在感があります。神馬として神聖な雰囲気を漂わせ、訪れる人々の目を引きます。

久能山東照宮 久能稲荷神社・厳島神社

楼門の先、東側には、赤い鳥居が連なる場所があります。鳥居が何本も並び、奥へ進むほど重なって見える様子は印象的です。朱色の鳥居が作る光景は、光の加減によってさまざまな表情を見せてくれます。

久能山東照宮 久能稲荷神社・厳島神社

鳥居を抜けた先には、末社稲荷神社と末社厳島神社が並んでいます。二つの社は合殿になっており、西向きに建っています。稲荷神社には五穀豊穣の神・保食神が祀られ、厳島神社には市杵島姫命が祀られています。もともと厳島神社は弁財天社として信仰されていましたが、神仏分離により現在の名前になりました。

久能山東照宮 久能稲荷神社・厳島神社

赤い鳥居を一歩ずつくぐりながら進むと、次第に神聖な雰囲気が増していきます。鳥居をくぐるたびに、外の世界から神域へと踏み入る感覚があり、厳かな気持ちになります。参道の静けさの中で、風の音や木々のざわめきを感じながら歩くことで、神社への信仰や歴史の重みを身近に感じることができます。

久能山東照宮 久能稲荷神社・厳島神社

末社稲荷神社は、五穀豊穣や商売繁盛を祈る神社として信仰されています。元々は久能山の山上に鎮座していましたが、明治時代に現在の場所へ遷座されました。厳島神社は、市杵島姫命を祀る神社で、水の神や芸能の神として信仰されています。かつては弁財天社と呼ばれており、現在もその名残を感じることができます。

久能山東照宮 鳥居

参道を進んでいくと、大きな鳥居が目の前に現れます。その存在感に圧倒され、自然と足が止まります。石段の下から見上げると、鳥居の向こう側に、上空の空がぽっかりと広がっています。

久能山東照宮 鳥居

久能山はその独特な地形でも知られています。急峻な崖が駿河湾に接し、険しい峽谷が東西両面を囲んでいます。御社殿へ向かう途中、境内は踊り場と階段が繰り返され、歩くごとにその地形の特性を強く感じることができます。

久能山東照宮 鼓楼

久能山東照宮の鼓楼(ころう)は、もともと鐘楼(しょうろう)として創建されました。しかし、明治時代の神仏分離に伴い、鐘が太鼓に替えられ、現在の名称となりました。1873年には旧幕臣の小島勝直氏が、江戸城にあった太鼓を奉納したと伝えられています。建物の装飾は華やかで、精緻な彫刻や彩色が施されています。

久能山東照宮 五重塔跡

久能山東照宮の五重塔跡は、かつて三代将軍・徳川家光の命により建てられた五重塔があった場所です。1635年に着工し、1636年正月に完成した高さ約30メートルの塔でした。しかし、明治時代の神仏分離により撤去され、現在は礎石のみが残されています。五重塔跡は、かつての壮大な建築の面影を今に伝える歴史的な場所です。

久能山東照宮 五重塔跡

五重塔跡の前には、歴史を感じさせる石灯籠が並んでいます。それぞれ形が異なり、時代ごとの特徴を残しています。風雨にさらされながらも、長い年月を経てなお佇む姿は、往時の久能山東照宮の姿を想像させます。細部の彫刻や石の質感をよく見ると、職人の技術の高さが伝わってきます。五重塔の遺構とともに、灯籠もまた歴史の一端を今に伝えている存在といえます。

久能山東照宮 実割梅

実割梅(みわりうめ)は、徳川家康が駿府城で育てた梅の木で、江戸時代には梅干を作り東照宮に奉納する習わしがありました。しかし、明治維新後、奉納が途絶え、存続が危惧された梅樹は、徳川慶喜と協議の上、1876年に東照宮へ移植されました。現在も梅樹の管理と梅干作りが行われています。

久能山東照宮 神楽殿

久能山東照宮の神楽殿は、重要文化財に指定されている社殿です。古記録には「古来神楽は奏せざる例」とあり、過去には武家が奉納した絵馬が掲げられていたとされ、歴史的な価値を持つ建築物です。場所は唐門手前で右に曲がり、その右手にあります。江戸時代の建築様式を今に伝え、細部まで美しい装飾を見ることができます。

久能山東照宮 神楽殿

プラモデルの展示がありました。静岡はプラモデル産業が盛んな地域で、バンダイの工場をはじめ、青島文化教材社、タミヤ、ハセガワ、フジミ模型といった有名メーカーがあります。その歴史を遡ると、徳川家康を祀る静岡浅間神社の修復や、久能山東照宮の造営に際し、全国から集まった職人たちが駿府に定住したことに由来します。彼らの技術は時代とともに発展し、やがて木製玩具やプラスチック模型の製造につながりました。

久能山東照宮 神庫

神庫(しんこ)は、重要文化財に指定されている建物です。奈良の正倉院と同じ校倉造りで、昔は神社に伝わる宝物類が納められていました。現在は博物館ができたため、収蔵庫としての役割は終えていますが、歴史的な価値を持つ建物として残されています。神楽殿の先にあり、石段を上がった先に見える位置にあります。

久能山東照宮 神庫

神庫は、神楽殿を抜けた先にあり、木の温もりを感じる造りが特徴です。その横には竈神社の屋根が見え、周囲の風景とともに歴史を感じることができます。伝統的な建築技術の美しさを堪能することができます。

久能山東照宮 竈神社

竈神社は、防火の神を祀る歴史ある神社です。小規模ながらも特徴的な見世棚造りの社殿が印象的です。創建は1646年と古く、火の神への信仰が息づいています。神社は一段高い場所に位置し、防火や火にまつわるご利益を願う人々にとって、大切な場所となっています。

久能山東照宮 日枝神社

日枝神社(ひえじんじゃ)は、大山咋命(おおやまくいのみこと)を御祭神とする神社です。創建当時は本地堂(ほんじどう)として薬師如来像を安置していましたが、明治時代の神仏分離により仏像を移し、楼門内東側の山王社の御神体を納めて「日枝神社」と改めました。

久能山東照宮 日枝神社

境内には徳川家歴代の家紋が大きく掲げられており、その存在感に圧倒されます。また、大量の酒樽が奉納されています。奉納された酒樽が整然と並ぶ姿は壮観で、神社の格式の高さを感じることができます。こうした光景を見ることで、日枝神社が今も多くの人々に信仰されていることを実感することができます。

久能山東照宮 楼門

久能山東照宮は、壮麗な歴史と絶景を楽しめる徳川家康ゆかりの神社です。

この先には、御社殿があるので今から行ってみたいと思います。

それでは、また。

歴史と絶景の門 久能山東照宮 一ノ門

久能山東照宮 一ノ門は、静岡県静岡市駿河区根古屋にある門です。

久能山東照宮 一ノ門

一ノ門は、山下より17曲りの石段を登った先にある門です。ここからは駿河湾、伊豆半島、御前崎を一望することができます。城門風の造りで、屋根は左右切妻造りの銅板葺きです。かつては櫓門でしたが、1884年9月15日に発生した暴風で倒壊し、現在の平屋建てに改められました。長い歴史を感じさせる佇まいが特徴です。

久能山東照宮 一ノ門

久能山東照宮の一ノ門は、長い石段の参道を登りきったゴール地点にあります。参道を進むにつれて見えてくるこの門は、登りの苦労を忘れさせるような存在感があります。最後の一歩を踏み出し、門が目の前に現れた瞬間、達成感とともに感動を覚えることでしょう。ここまでの道のりが報われる瞬間です。

久能山東照宮 一ノ門

一ノ門の構造をじっくり見ると、一部に新しい木材が使われているのがわかります。長い年月を経て劣化した部分が修復されているのでしょう。新旧の木材が混在することで、歴史とともに今も維持されていることが実感できます。古い造りを守りつつ、適宜補修を重ねてきたことが伝わってきます。

久能山東照宮 門衛所

一ノ門をくぐると、すぐ先に門衛所があります。ここはかつて上番所と呼ばれ、警備の拠点でした。建物の前面には敷台があり、かつては総門番の配下が昼夜交代で勤務していました。西側には下番所もあったようですが、現在その建物は残っていません。1981年に改築され、今も歴史の面影を残しています。

久能山東照宮 一ノ門

門をくぐり、振り向いた瞬間、視界いっぱいに広がる青い海と空が目に飛び込んできます。開いた門がまるで額縁のようになり、風景を切り取った一枚の絵のように見えました。自然と足を止めてしまうほど美しい光景で、しばらくの間、その景色に見入ってしまいました。

久能山東照宮 一ノ門

高台に位置するだけあり、一ノ門からの景色は素晴らしいものがあります。遠くの海岸線、伊豆半島の稜線、そして広がる海原が一望できます。風が心地よく吹き抜け、開放感に包まれます。こうした景色を見ると、ここが要所として守られてきたことにも納得させられます。

久能山東照宮 一ノ門

一ノ門は、長い石段を登った先にある歴史ある門です。かつては櫓門でしたが、今では平屋建ての門として残り、その先には門衛所もあります。門をくぐると、そこには額縁のように切り取られた海と空が広がり、登ってきた苦労が報われるような景色が待っています。

機会があれば、再度来てみたいですね。

それでは、また。

歴史と絶景を楽しめる参道 久能山東照宮 表参道

久能山東照宮 表参道は、静岡県静岡市駿河区根古屋にある参道です。

久能山東照宮 表参道

久能山東照宮の表参道は、山下の石鳥居を起点とし、険しい石段を登る伝統的な参拝ルートです。総段数は1,159段あり、参道には歴史的な見どころが点在しています。江戸時代から続くこの道は、かつて唯一の参拝路として多くの人々が歩んできました。現在では日本平ロープウェイも利用できますが、表参道を登ることで、より一層歴史の重みを感じることができます。

久能山東照宮 表参道

表参道の入り口は久能街道沿いにあります。かつては宿場町として栄え、多くの旅館や商店が立ち並んでいました。現在も地元の特産品を扱う店や、休憩所として利用できる場所があります。ここから先、山へと続く石段を登りながら、歴史を感じることができます。江戸時代の参拝者と同じ道を歩くというのも、興味深い体験になるでしょう。

久能山東照宮 表参道

久能街道から北へ約150メートル進むと、大きな石鳥居が姿を現します。これは明神造の鳥居で、1915年の東照宮三百年祭を記念して建てられました。高さ6.5メートル、幅5.5メートルの堂々たる構えで、柱の直径は60センチもあります。この鳥居をくぐると、いよいよ久能山東照宮への参拝が始まります。

久能山東照宮 表参道

表参道は険しい石段が続く道で、全長1,159段にも及びます。昔の人々は「いちいちごくろうさん」と洒落を言いながら登ったそうです。1957年に日本平ロープウェイが開通するまでは、これが唯一の参拝ルートでした。現在でも、この石段を登ることで、江戸時代の参拝者が歩んだ道のりを体験することができます。

徳音院 大聖歓喜天堂

参道の途中には、徳音院 大聖歓喜天堂など、見どころが点在しています。徳音院は、徳川家康や三代将軍に仕えた南光坊天海(眼大師)によって開かれた寺院です。ここには家康ゆかりの薬師如来をはじめ、不動明王、財福聖天、厄除開運の両大師が祀られています。駿河の霊場としての歴史を持ち、久能山東照宮とともに長い間信仰の場となってきました。

久能梅園

参道を登り始めてすぐ左手には、久能梅林があります。約3,000平方メートルの敷地に、10種類・約130本の梅が植えられており、春になると美しい花を咲かせます。早咲き・中咲き・遅咲きと異なる品種があり、長い期間楽しむことができます。

久能梅園

7月に訪れた久能梅林は、すでに梅の花の季節を過ぎ、木々は青々と茂っていました。春には華やかな花を咲かせる梅林ですが、夏はまた違った趣があります。葉が生い茂る中を歩くと、木々が作る木陰が心地よく、涼しさを感じることができます。花の時期ではなくても、広がる緑の景色を楽しむことができました。

久能梅園

久能梅林の近くには、印象的な朱色の太鼓橋があります。この橋は周囲の緑とよく調和し、視界に鮮やかなアクセントを加えています。さらに視線を遠くに向ければ、駿河湾の穏やかな海が広がります。天気が良ければ、伊豆半島まで眺めることができ、絶景を楽しむことができます。

駿河稲荷社

駿河稲荷社は、かつて久能山の代官を務めた杉江家が伏見稲荷大社から勧請したものです。もともとは杉江家の敷地内に祀られていましたが、1982年に現在の場所へと移されました。古くから五穀豊穣や商売繁盛の神として信仰され、農業や商業に携わる人々の厚い崇敬を受けてきました。日本全国に数多くの稲荷神社がありますが、ここ駿河稲荷社もまた、そうした信仰の流れを汲む神社の一つです。

久能山東照宮 表参道

表参道の特徴は、その折り返しの多さです。いわゆる「17曲がり」と呼ばれ、登っては折り返し、また登るという繰り返しが続きます。石段はしっかり整備されています。登る途中には、石垣や木々が生い茂り、歴史を感じながら進むことができます。昔の人は「いちいちごくろうさん」と洒落を言いながら登ったそうです。

久能山東照宮 表参道 長坂

長坂まで到達すると、すでにかなりの高さまで登ってきたことを実感します。特に夏場は厳しく、湿度も高いため汗が止まりません。途中で立ち止まりながら、適度に休憩を取るのが良さそうです。階段の途中には所々に腰を下ろせるスペースがあるため、無理をせずに進むことができます。水分補給をしながら、一歩ずつ登っていきます。

久能山東照宮 表参道

長坂を超えてさらに上へ進むと、木々の間から視界が開けるポイントが出てきます。駿河湾の青い海が見え始め、時折吹く風が心地よく感じられます。ここまでの汗が一気に引くような涼しさです。階段の勾配は相変わらずですが、風景が変わることで気分転換にもなります。このあたりまで来ると、ゴールまであと少しという気持ちになってきます。

久能山東照宮 表参道 潮見坂

潮見坂に到着すると、駿河湾が一望できます。ここからの景色は格別で、天気が良い日には伊豆半島まで見渡せます。眼下に広がる海と空の青さが印象的です。ここでしばし足を止め、景色を眺めながら息を整えます。長い道のりを登ってきた疲れも、この景色を見れば少しは和らぐかもしれません。

久能山東照宮 表参道

17曲がり1,159段を登り切ると、ついに久能山東照宮 一ノ門に到着します。ここまで来ると、表参道の険しさと、それを登り切った喜びが入り混じります。長い道のりでしたが、歴史を感じながらの参拝は特別な体験になります。

久能山東照宮 表参道

久能山東照宮の表参道は、長い石段と曲がりくねった道が特徴です。体力的には厳しい道のりですが、道中で見られる景色や歴史的な建造物が魅力的です。途中の潮見坂では、駿河湾を見渡す絶景も楽しめます。長い階段を登り切り、一ノ門に辿り着いた瞬間、達成感が込み上げてきます。

機会があれば、再度来てみたいですね。

それでは、また。