久能山東照宮 表参道は、静岡県静岡市駿河区根古屋にある参道です。

久能山東照宮の表参道は、山下の石鳥居を起点とし、険しい石段を登る伝統的な参拝ルートです。総段数は1,159段あり、参道には歴史的な見どころが点在しています。江戸時代から続くこの道は、かつて唯一の参拝路として多くの人々が歩んできました。現在では日本平ロープウェイも利用できますが、表参道を登ることで、より一層歴史の重みを感じることができます。

表参道の入り口は久能街道沿いにあります。かつては宿場町として栄え、多くの旅館や商店が立ち並んでいました。現在も地元の特産品を扱う店や、休憩所として利用できる場所があります。ここから先、山へと続く石段を登りながら、歴史を感じることができます。江戸時代の参拝者と同じ道を歩くというのも、興味深い体験になるでしょう。

久能街道から北へ約150メートル進むと、大きな石鳥居が姿を現します。これは明神造の鳥居で、1915年の東照宮三百年祭を記念して建てられました。高さ6.5メートル、幅5.5メートルの堂々たる構えで、柱の直径は60センチもあります。この鳥居をくぐると、いよいよ久能山東照宮への参拝が始まります。

表参道は険しい石段が続く道で、全長1,159段にも及びます。昔の人々は「いちいちごくろうさん」と洒落を言いながら登ったそうです。1957年に日本平ロープウェイが開通するまでは、これが唯一の参拝ルートでした。現在でも、この石段を登ることで、江戸時代の参拝者が歩んだ道のりを体験することができます。

参道の途中には、徳音院 大聖歓喜天堂など、見どころが点在しています。徳音院は、徳川家康や三代将軍に仕えた南光坊天海(眼大師)によって開かれた寺院です。ここには家康ゆかりの薬師如来をはじめ、不動明王、財福聖天、厄除開運の両大師が祀られています。駿河の霊場としての歴史を持ち、久能山東照宮とともに長い間信仰の場となってきました。

参道を登り始めてすぐ左手には、久能梅林があります。約3,000平方メートルの敷地に、10種類・約130本の梅が植えられており、春になると美しい花を咲かせます。早咲き・中咲き・遅咲きと異なる品種があり、長い期間楽しむことができます。

7月に訪れた久能梅林は、すでに梅の花の季節を過ぎ、木々は青々と茂っていました。春には華やかな花を咲かせる梅林ですが、夏はまた違った趣があります。葉が生い茂る中を歩くと、木々が作る木陰が心地よく、涼しさを感じることができます。花の時期ではなくても、広がる緑の景色を楽しむことができました。

久能梅林の近くには、印象的な朱色の太鼓橋があります。この橋は周囲の緑とよく調和し、視界に鮮やかなアクセントを加えています。さらに視線を遠くに向ければ、駿河湾の穏やかな海が広がります。天気が良ければ、伊豆半島まで眺めることができ、絶景を楽しむことができます。

駿河稲荷社は、かつて久能山の代官を務めた杉江家が伏見稲荷大社から勧請したものです。もともとは杉江家の敷地内に祀られていましたが、1982年に現在の場所へと移されました。古くから五穀豊穣や商売繁盛の神として信仰され、農業や商業に携わる人々の厚い崇敬を受けてきました。日本全国に数多くの稲荷神社がありますが、ここ駿河稲荷社もまた、そうした信仰の流れを汲む神社の一つです。

表参道の特徴は、その折り返しの多さです。いわゆる「17曲がり」と呼ばれ、登っては折り返し、また登るという繰り返しが続きます。石段はしっかり整備されています。登る途中には、石垣や木々が生い茂り、歴史を感じながら進むことができます。昔の人は「いちいちごくろうさん」と洒落を言いながら登ったそうです。

長坂まで到達すると、すでにかなりの高さまで登ってきたことを実感します。特に夏場は厳しく、湿度も高いため汗が止まりません。途中で立ち止まりながら、適度に休憩を取るのが良さそうです。階段の途中には所々に腰を下ろせるスペースがあるため、無理をせずに進むことができます。水分補給をしながら、一歩ずつ登っていきます。
長坂を超えてさらに上へ進むと、木々の間から視界が開けるポイントが出てきます。駿河湾の青い海が見え始め、時折吹く風が心地よく感じられます。ここまでの汗が一気に引くような涼しさです。階段の勾配は相変わらずですが、風景が変わることで気分転換にもなります。このあたりまで来ると、ゴールまであと少しという気持ちになってきます。

潮見坂に到着すると、駿河湾が一望できます。ここからの景色は格別で、天気が良い日には伊豆半島まで見渡せます。眼下に広がる海と空の青さが印象的です。ここでしばし足を止め、景色を眺めながら息を整えます。長い道のりを登ってきた疲れも、この景色を見れば少しは和らぐかもしれません。

17曲がり1,159段を登り切ると、ついに久能山東照宮 一ノ門に到着します。ここまで来ると、表参道の険しさと、それを登り切った喜びが入り混じります。長い道のりでしたが、歴史を感じながらの参拝は特別な体験になります。

久能山東照宮の表参道は、長い石段と曲がりくねった道が特徴です。体力的には厳しい道のりですが、道中で見られる景色や歴史的な建造物が魅力的です。途中の潮見坂では、駿河湾を見渡す絶景も楽しめます。長い階段を登り切り、一ノ門に辿り着いた瞬間、達成感が込み上げてきます。
機会があれば、再度来てみたいですね。
それでは、また。