越谷市花田苑・花田第六公園 藤棚は、埼玉県越谷市花田にある藤棚です。

越谷市にある花田苑は、池泉回遊式の日本庭園として平成に開園した比較的新しい施設です。園内には約14,000本もの樹木が配され、四季を通して自然の美しさを感じることができます。瓢箪の形をした池を中心に、庭園全体が緩やかに広がり、歴史ある大名庭園の様式を現代に再現しています。開花亭で開催される茶会なども含め、和の空間に浸ることができます。

長屋門は、花田苑のエントランスとして重厚な佇まいを見せています。ここで入場の手続きを済ませ、門をくぐると、ゆるやかな園路が庭園の奥へと続いています。日常の喧騒から離れ、静かな庭の世界へと自然に足が向かっていくような導線が印象的です。門を抜けた瞬間から空気が変わる感覚を味わうことができます。
花田苑は瓢箪のような形をした池を中心に、園路が池をぐるりと囲むように整備されています。回遊式庭園のため、散策路をたどることで多様な風景を順に楽しむことができます。舗装は細やかな配慮がなされ、歩きやすいのも特徴です。池の周囲には石橋、木橋、そして美しい太鼓橋があり、散策の合間に立ち止まるスポットが多くあります。

花田苑に入場すると、受付で手渡されるのが紙のマップと「花暦(はなごよみ)」です。この花暦には季節ごとの草花や木々の見頃が丁寧に記されており、今の時期にどのエリアでどの植物が見られるのか一目でわかるようになっています。花暦を片手に園内を歩くことで、見どころを逃さずに楽しむことができます。

花田苑の西側には立派な藤棚が設けられています。訪れたのは11月上旬で、藤の花が咲く季節はとうに過ぎていましたが、棚には青々とした葉がまだ残っていて、秋風に揺れる姿が印象的でした。花のない季節でも藤棚は風景の一部として十分に存在感があり、静けさの中に力強さを感じる場所です。木製の柱や梁も美しく整備されており、藤棚そのものが庭園の一風景として溶け込んでいました。
藤棚の下に立つと、その向こうには池泉や太鼓橋のシルエットが広がっています。水面に映る橋の曲線が静かに揺れ、風景に奥行きを加えています。紅葉の時期には、赤や黄に染まった木々が池に映り込み、まるで絵画のような景色になるようです。春から初夏には新緑の中で藤の花が咲き、秋には燃えるような紅葉が園を包む、季節ごとに異なる表情が味わえます。

藤棚のそばには数脚のベンチが設置されており、休憩しながら庭園を眺めることができます。池や橋、竹林、茶室までを一望できる場所でもあり、視界がひらけていてとても開放感があります。腰を下ろしてゆったりと眺めることで、庭園の広がりと調和がより深く感じられます。喧騒を離れた穏やかな空間として、このベンチの存在はとてもありがたいものです。

藤棚のそばには、砂浜のように見える場所があります。石段状のスロープが湖面近くまで続いており、水辺により近づくことができます。このようなつくりは、後楽園や兼六園でも見られるような伝統的な日本庭園の要素のひとつです。水のきらめきや、水面に映る空や木々の姿を間近に感じられる場所で、静かな時間を過ごすには最適です。

花田苑は平成の時代につくられたにもかかわらず、伝統的な大名庭園の要素を随所に取り入れた完成度の高い日本庭園です。四季の変化を楽しむことができ、訪れるたびに異なる景色が広がっています。西側にある藤棚は季節を問わず庭園の構成美を支える存在であり、池泉や太鼓橋との相性も抜群です。散策路やベンチなども丁寧に配置されており、静かに時間を過ごすことができます。

機会があれば、再度来てみたいですね。
それでは、また。